月刊青島--青島日本人会生活文化会発行
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グリーン放弾
 
 

ジェトロの松村と申します。山口銀行青島支店の片山様よりバトンを引き継ぎ、今回寄稿させていただくことになりました。

私は2018年2月末に青島に赴任して参りましたので、ほぼ1年が経とうとしています。
前任者より、ゴルフが好きなら青島はとても良いところだと聞いておりましたが、まさにその通りの地でした。この1年間でラウンドした回数は24回、ほぼ2週間に一度のペースでゴルフが出来る、東京から赴任した私にとっては夢のような場所です。

でも、実は過去に週6回のペースでラウンドをしていた時期があります。プロゴルファーになろうとしていたわけでも、大学の体育会ゴルフ部だったわけでもありません。
その理由は、以前私が住んでいた場所にあります。

1998年8月、私は夫の駐在地であるアフリカのタンザニアという国に、夫から遅れること数カ月、仕事を退職し駐在員の妻として赴くことになりました。私にとっては初めての海外生活、そしてアフリカです。持って行くものを準備するにも、とにかく現地では何も手に入らないと言われ、日本食はもちろんのこと、衣類、靴、日用品、さらには家具まで。その量は占めて40フィートコンテナ1本分。ちなみに別送で車(!)も持って行きました。

そんな地に行くのですから、到着してからすぐに無いと困るものもたくさんあるわけで、大きなスーツケース2つに入る分だけ入れ、後は船便よりは早い航空便で送ることにしました。そこで悩んだのが、ゴルフバッグです。担いで持って行くか、航空便で送るか。。。
そこで、夫に相談したところ、絶対に担いで持って来いと言います。その理由は着いたらすぐに分かるとも。というわけで、スーツケース2つとゴルフバッグを担いで、日本から約24時間かかるタンザニアの地に降り立ちました。

到着した次の日、朝から家で荷ほどきをしていると、一本の電話がかかってきました。
「おはようございます。あなたがいらっしゃるのをとても心待ちにしてたのよ。ところで、明日の午前中のご都合はいかが?」といきなり日本人の女性の声が電話から聞こえて来ました。思わず気おされて、「だ、大丈夫です。」と言うと、「じゃあ、明日8:30にジムカーナゴルフクラブでね。」とだけ告げて、電話は切れました。名前は最初に言っていたような気がしますが、来たばかりの私にとってはそれが誰だかも分からず、仕事から帰ってきた夫にその話をするとニヤッと笑い、とりあえず明日行ってみたらと言われました。

不安を抱えたまま、次の日にゴルフクラブに行ってみると、そこには当時20代だった私から見ると素敵なお姉さま方(駐在員の奥様)が二人待っていてくれました。そのお二人は真っ黒に日焼けをしていて、聞くとほぼ毎日ゴルフをやっているとのこと。そんなゴルフが大好きなお二人のおかげで、スーパーの場所を知るよりも早くゴルフ場を知り、到着して早3日目にしてタンザニア初ラウンドを経験することになりました。それから帰国するまでの約2年半、週6日ゴルフ三昧の夢のような生活を送ることができたのでした。

ちなみに、タンザニアでゴルフ。皆さんどのような想像をされるでしょうか?プレイ中にライオンが襲ってくるかも?象の足跡でできたディボットにボールが入ったら、無打罰で6インチリプレース?でも、そもそも象の足跡が6インチ以上あるなあ。とか。はい、どれも不正解です!なぜならば、これらの動物は、私が住んでいた場所から少なくとも飛行機で3時間は行かないと見られません。もちろん家の窓の外からキリンが部屋の中に首を突っ込んでくるとか、無いです。(笑)

私が住んでいた街にはゴルフ場は一つしかありませんでしたが、その場所は、街の真ん中で隣は大統領官邸、そして、すぐ横にはインド洋の海が広がるとても風景が美しいところでした。ゴルフ場の手入れはお世辞にも良いとは言えず、フェアウェイなのか、ラフなのか、はたまたただの野原なのかという状態でしたが、その中で唯一、常に整っているところが一か所だけありました。それは「ブラウン」と私たちが呼んでいた場所です。

ゴルフのホールには普通、ティーグラウンド、フェアウェイ、ラフ、バンカー、ハザード、
グリーンなどの名称がありますが、はて「ブラウン」とは?
それは、パターでボールをカップに入れるところです。でもパターを打つ場所が芝ではなく、砂です。色が茶色く見えるから、グリーンではなく「ブラウン」なのです。砂の上でパターを打つなんて、と思われるかもしれませんが、砂にタールを混ぜて固めてあるので、意外とボールも転がります。また、傾斜もあったりするので、グリーンと同じようにラインを読まないと入りません。

さて、その場所がなぜ常に整っているのかですが、絶対に整っていなければいけない場所だからです。「ブラウン」は砂にタールを混ぜたもの、固めてあるとは言えボールが転がれば跡が残ります。なので、ブラウン上では誰かが1打打つ毎にその跡(さらにはプレーヤーの足跡も)を消さなければいけないのです。この消す作業、グラウンドを整備するトンボのようなものを使うのですが、強くやりすぎると砂がどんどん削られていき、そこだけへこんだようになってしまうのでなかなかのコツが必要です。

と、あの頃のことを思い出しながら書いていたら長文になってしまいました。他にもアフリカゴルフならでは、の話がたくさんあるのですが、それはまたの機会にします。興味がある方は、ラウンドでご一緒する時にでもお話ししますので、気軽にお声掛けください。
最後までお読みいただいてありがとうございました。

 

 


 

 
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