春節の日の朝、中国ではどんな食卓を囲むのだろうか。日本のような家族が家長を中心に座り、一家の健康を祈願してお屠蘇で乾杯して始まる儀式のようなものはないようだ。格式ある旧家では特別な儀式があるかもしれないが、今年86歳になる老人に聞いたところ、晦日の夜が重要でその日付の変わる深夜12時前後に一家で餃子を食べることが儀式であって、寝ている子も皆起こして一家団欒での餃子パーティがいわば「無病息災」ということになるようだ。
新月の真っ暗な宵の行事はイスラムのラマダンと共通している。「ビンボーであったが楽しかった」。と、話していて思わず笑みがこぼれた。正月は子供たちは昼間、近隣の親戚や知り合いのところをどこまでも歩いて訪ねマントウを食したという。日本では関東と関西でお雑煮、おせちの味や中身、それに風習といったものが違い、その家風をもって旧家に嫁いだヨメの場合、まずは姑の差配で嫁ぎ先のしきたりに合わせることになるのだろう。それから少しずつアレンジされながら次の世代に伝わっていくのだろうか。
しかし、今の時代、若夫婦が独立して居を構えると、これまで育った家の風習というのはどのように受け継がれていくのだろうか。合理的にお互いの良いところを取り入れるのか、別にこだわらないから料理ができれば良いので口は出さず言われる通りに済ますということもあるだろう。新郎側の親は自分のところの習慣が続いていると思っても、新家庭を覗くと新婦側の風景一色になっているということで新所帯の形勢は即理解される。都会にあっては家のしきたりや伝統というものは見つけるのが難しいくらいになっているのではなかろうか。
中国では遅くとも春節の宵の餃子パーティに間に合うように大移動がある。夫婦別姓と言っても男性側の姓を名乗るから子供は男性側の姓でつながっていく。それゆえに農村では男の子を欲しがる。その子が教育を受け辺鄙な村で優等生になり都会の大学を卒業し先端のIC企業に入社した。恋愛した相手が都市籍の女性。いくつかの葛藤を乗り越えて所帯が出来た。実家には車で高速を走っても10時間近くかかる。生まれた子供は愚図るし田舎は寒い。それに正直なところ汚い。嫁は同じ省でありながら夫の両親の方言がきつすぎて話が通じないところが多々ある。そうして毎年帰ってくる息子一家を迎える田舎の両親にとって嫁はもう客扱いになる。座っているだけで良い。
大晦日の大人気番組「春節聯歓晩会」は夜8時から深夜0時半まで続く。
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