月刊青島--青島日本人会生活文化会発行
目次

編集後記
 

 

 

  先日,曇天の折に海辺を散歩していると太陽が雲に中に浮かんでいるような幻想的な光景に遭遇しました。青島の海辺は,四季折々様々な表情を見せ,それにつれて私たちに様々な思いをもたらします。

  先日,北京の知り合いから「明日青島の映画学院で日本人俳優による『老人と海』の公演がある,時間があれば見に行ってほしい」との連絡があり,黄島にある北京映画学院の青島分校(そこでは2,000人の学生が映画についての専門を学んでいる)に行ってみることにしました。到着すると小さな会場は学生達で溢れ,席に座れない学生は会場前の床に直に座っているほどでした。

  その劇は,既に80歳と60歳を超えた二人の男性俳優が,ヘミングウェーの『老人と海』を1時間30分をかけて再現するもので,特別な舞台装置はなく,60歳の方が説明役と少年訳を兼ね,ひたすら「今老人は荒れ狂う海で,巨大な魚と格闘している,右手を負傷した・・」などと説明し,80歳の方が老人役で船の上での巨大な魚とのドラマを表現するというものでした。(もちろん,老人にもセリフがありますが,説明役は小説をまるごと覚えていらっしゃるようで驚嘆しました。)それに,ピアノ伴奏(日本人女性)がついて劇を盛り上げます。すべて日本語なので,映画学院の学生は,映し出された字幕で理解するとう具合でした。これは,北京の演出会社が日中文化交流の一環として行ったもので,なぜ『老人と海』?という疑問はありましたが,少し不思議ながらも見事な日中交流が成り立っていたと思います。

  映画学院の学生達は,皆いかにも映画・演劇を学んでいる雰囲気で,二人の日本人俳優の熱演に見入っている様子でした。『老人と海』は,老人と巨大な魚との格闘を通じて人生を描き,人々はその作品を通じて自己の人生に思いを抱きます。映画や演劇を学ぶ若い中国人を目のあたりにして,是非近い将来,中国の映画・演劇でそのような深い内容を表現できるような人材がどんどん出てきてほしいと思いました。恐らく今回の劇を演出した3名の日本の方もそのように感じられたのではないかと感じます。

  黄島・西海岸は「東方版ハリウッド」を目指していますが,このように意欲あふれる若い人材を育成し,巨額投資の映画だけではなく,本当の意味で人に感動を与える映画を制作してほしいと思います。

  それでは,楽しい年末年始を過ごされることをお祈りいたします。

 
   
    
 編集長
 

 
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