月刊青島--青島日本人会生活文化会発行
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青島の空の下で(61)  
   

日本では正月9日間の休暇が話題になるが 中国では10月の国慶節と春節は連続1週間あり、それに有給休暇をくっつけて10日くらい休むのは可能である。旅行社からのメルマガをみていると日本の誇るクルーザー「飛鳥」で世界一周103日の旅というのがあった。2020年の4月に横浜を出てアジアからスエズを通り地中海に入り、西欧、北欧、北極圏まで行き、大西洋を渡って北米東海岸からカリブ海へと下りて、パナマを抜けて北米西海岸に入り太平洋を渡って7月に横浜着岸というコースである。もちろん三食付きで毎夜、素晴らしいエンターテイメントが催されるのだろう。

このツアーで一番安いのが414万円。一番高いロイヤルスイートは約10倍の4890万円!!しかもこれは1人の価格で もし1人で参加の場合は安い方でも280万円の追加費用が必要ということだ。先般 日本の老後生活に2000万円の資金が話題になったが、この企画ではバルコニー付きの部屋に夫婦2人で予約すればそれで終わりになる。こういう船だから着るものにも相当凝る必要あろう。よほどの「ゆとり」がなければ乗船の間惨めな思いをするだろうし、楽しくないのではと思うがどうであろうか。

昨年はアポロの月面着陸から50年ということであった。そのころ大学の寮にいたわたしはこの世界的な偉業を食堂にある1台の白黒テレビの前で同時通訳に聞き入っていた。深夜であったように思うがなかなか部屋に戻れなかった。月に達する日にちを調べると、発射から約103時間(4日と7時間)の旅で月面に到達し21時間半ほど滞在し71時間(約3日)かけて帰還したそうで全部で8日間の旅ということだ。ワシントンの博物館で実物にお目にかかったが、あの狭い空間に3人の大男が閉じ込められてよく我慢できたものと感心した。

今から150年ばかり前の明治4年、50有余人で出発した岩倉使節団というのがある。こちらの方は1年9か月という長い期間、国のトップというべき人が留守にして世界各地を回った。何とも凄いことをしたものと思うが、最初サンフランシスコに3週間強かかり、1か月半後にワシントンに到着した。視察ということではあったがこれだけの逸材であるから相手と交渉事をしたい。しかし全権委任状もないのでは相手にされない。何と大久保と伊藤はこのために日本に戻り再び合流したのが7月の終わりであったという。この無駄な時間や経費をどのように収拾付けたのであろうか。

故国を離れて時間はある。何かマシな時間を使いたいものだと新年に思う。

 


 
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